私は立ち上がる。
すると俯いているアカネが見えた。


「…ごめんね、恵梨。私なんだ、連れてきたの」
「え…」

「私、この桜の木の妖精みたいなもので」

「は?」


ダメだ。
色々とついていけない。

…いや、でも
ついていかなくても良いかな。

――事実をありのままに受け止めると、壊れてしまいそうだから。


「そうなんだ」

「うん…。あの店があった場所はね、もともと私の片割れ?の桜の木が居たの。人間が挿し木で増やした、もう一人の私よ」

「…店を創るためにその木は伐られたの?」

「そうなの。いつかはそうなると思っていたから別に良かったけど。恵梨が危なかったから…咄嗟に助けるために、連れてきたの」


……ありがとう。と言った方が良いのかな。

そんな葛藤が分かったのだろうか。アカネは慌てる。


「や、いいの!お礼とかは!私が、自分本意な願いで、あなたには死んでほしくなかったの!」

「…そっか」