**********
(side:恵梨)


嫌な予感というものは、よく当たる。


「此処は、恵梨が居た時代の約150年前……江戸時代だよ」


アカネの言葉に、思考が停止した。

自分で訊いたことだったけど、受け入れたくない事実。


ああ、分かってた。


私はその場に座り込んで両手で顔を覆う。


分かってた。
だって、元の時代なら桜が咲く季節じゃないもの。


「…恵梨。……ごめんね」

「……なんで、アカネが謝るの」

「………泣いてるの?」

「…、泣いてない」


泣いてない。
泣きたくもないよ。
こんな状況。


帰る方法があるかもしれない。

顔から手を離してアカネに訊ねる。


「私……帰れる?」

「…たぶん。」


“たぶん”…、か。

いや、それでいい。
可能性があるならそれで。