時間はかかる。
けれど、帰れる。

元の時代に、……平成に。


「そっか、ありがとう。アカネ」


私がお礼を言うと、アカネはそれを否定した。


「ううん。連れてきたのはあたしだから……」

「…でも、事故から助けてくれたんでしょう?」

「そう、だけど…」


声色からしか判断ができないが、アカネは落ち込んでいる。

そんなに反省しなくても…。

たしかに、私をこの時代に連れてきたのはアカネだけど、
アカネが行動していなかったら、私はおそらく死んでいた。

感謝もしているの。


「アカネ、私は大丈夫だから。大丈夫。だから、謝らないで」

「うん…」


アカネの返事に、私は一つ頷いてから、
少し離れた場所に居るであろう永倉さんを呼んだ。


「永倉さんっ!」


すると、足音が近づいてきて、


「用事は終わったのか?」


と、永倉さんの声がした。


「はい、ありがとうございました」

「じゃあ、帰るぞ」

「はい」


そして、行きと同じように
永倉さんが私の手を引きながら帰った。

その道中、ふと思った。

今日、私は思った。
事故から助けてもらって、アカネには感謝している、と。

でも、もし元の時代に帰れる可能性が全くないと言われていたら…。

私はきっと感謝しなかった。できなかった。


そう考えると、自分がすごく嫌になって。
ただでさえ暗かった視界が、さらに黒で塗りつぶされた気がした。