********* (side:マキ) 「う、そ……なんで、居ないの。…恵梨」 マキは呆然と呟く。 振り返って見えたのは、ガラス越しに恵梨に迫るトラック。 作られたばかりの壁を破り、ガラスを割り……恵梨も轢かれた…はずなのに。 その恵梨が居ない。 血も、ない。 恵梨が持っていた鞄も、全部。 「…………恵梨」 他の客が騒いでいるのが、どこか遠くで聞こえた。 (…お願い、生きてて)