話は大方終わったからか、副長は座ったまま身体を半回転させ、文机で書き物を始めた。

ぷぷっ、まだ仕事終わってないんか。
俺は既に終わったわ。


「大変やな、副長は。人一倍どころか、二倍くらい仕事あるさかい」

「うるっせぇ、同情すんなら手伝えよ」

「嫌や断固断る絶対やらへん」

「どんだけ嫌がってやがんだテメェ」


はあ、と呆れたようにため息ついた副長は、煙管に刻み煙草を入れて火をつけた。

次に吐いた息は煙やった。うぇー、目に染みるわぁ。

一息ついた所で


「なあ副長」


と声をかけた。
返事は帰ってきぃへんかったけど、続ける。


「恵梨ちゃん、時計の価値も分からんのに…自分の立場は理解しとる。俺らじゃ傷つけられへんこともや」


ピクリ、と副長の右肩が跳ねた。


「あらぁ、喋らんで、絶対。喋ったら殺されるような生まれなんか、……喋れるけど、俺らが信じんで殺される思っとんのか」

「どっちにしろ、『信頼』が必要不可欠ってか」


副長はかったるそうに首だけ振り替えってそう言った。