「あかねちゃんは?」

「とっくに教室に入ったよ」

「奈緒はどうして入らないの?」

「もちろんボーとしていた可愛いるいちゃんをじーっと見ていたかったから〜」


 寒気を感じたるいは何も言わなかった。それからスカーフを締め直してもらうと二人は教室に。

 教室はいつものようにシャーペンを走らせる音と暗記を復唱を中心に行われていた。

 先ほどの思い出に浸っていた淡い時間も、現実に戻されるとイヤになるが、るいはそのイヤな事をするために参考書を開いた。


「ふぁ〜い、授業始めるぞ〜」


 声からしてやる気が感じられない担任の野田、眠そうな目とだるそうな顔をしながら教室に入って来た。


「え〜、今日は進路相談するやつは手をあげて」


 その一言で何人かの生徒が手をあげ、その中にはるいも手をあげていた。