バスケットボールと先輩と私。



そんなことを思っていると、


「あ、先輩!」


木部は俺が来たことに気づき、座っているブランコから、こっちこっち、と言わんばかりに手招きをした。


か、かわええ…!


ブランコとか何年ぶりだろうか。

座ると、ブランコが凄く低く感じる。



「で、俺に会いたくなっちゃった?」


ちょっと調子乗ってそんなこと言ってみた。

そして

夜の暗さでもわかるくらい うるうる輝いている瞳で
俺の目をまっすぐ見てちょっと照れたように


聞こえるか聞こえないかの小さな声で。


「……ん」と、頷く木部。


その仕草が、何より可愛くて、愛しくて。


無意識にブランコから立ち上がり隣のブランコへ。


気付けば、木部実依子という、俺の天使でも小悪魔でもある存在の華奢な身体を抱きしめていた。