「木部?」 そう話す先輩の声も、 先輩の胸で響いてるからか、いつもとはちょっと違う。 「なん、ですか…?」 抱き締められてるからか、いつもよりちょっと喋りづらい。 「俺さ、」 静まった空気に、時計の秒針の動く音が鳴り響く。 カチ、カチ、カチ、カチ──── そして、その音より速い間隔で響く心臓の音。 ドク、ドク、ドク、ドク──── これは、私の心臓の音ですか。 先輩の心臓の音ですか。 それとも、 二人の、心臓の音ですか。