さっきまで呆れて俺を見ていたもう一人の俺が慌てて俺に叫ぶ。 ―――何、やってんだ? お前は教師だろ? 卒業まで我慢するべきだ、と説教する立場の人間だろ? 窓から見える月が、優しい色をしていた。 俺は間違っているかも知れない。 でも、もしも… この愛が本物ならば、俺の望む道も許されるんじゃないだろうか。 FMから流れる音楽は、穏やかな明るい曲。 矢沢は、ぎゅっと両手を握り締め、必死で涙をこらえていた。