矢沢は俺の提案にうつむいた。
寂しそうな瞳で一瞬だけ俺を見て、自分のひざに置いた手に視線を落とす。
矢沢は、今一緒にいたいと言った。高校生である今、俺が必要だと言った。
今、一緒にいたいんだ・・・と。
そりゃ・・・俺だって本音はそうだよ。
今、そばにいて、お前を支えたい。
そして、俺自身もお前の存在で癒されることだろう。
でもさ、
今一緒にいることで、これから先の俺達の未来が明るい方向へ行かないとしたら?
よくドラマで見る禁断の恋ってやつだろ?
生徒に目撃されて、PTAや教育委員会で問題になって、
生徒が退学。教師はくび…
そんな可能性がゼロではないんだ。
俺は矢沢には幸せになって欲しいから、何が何でも卒業までに問題を起こさせるわけにはいかない。
そう思ってんのにさ…
俺は矢沢の手を握っていた。

