ドキドキする。



高校時代、県の選抜に選ばれた。


スタート前に


目を閉じると、心臓の鼓動だけが聞こえた。



あの時と同じくらいドキドキしていた。




矢沢の鼓動なのか

俺の鼓動なのか

わかんねぇけど、とにかく抱き合ったまま2人はドキドキしている。





「俺、どうしていいかわかんねぇ。」



矢沢の頭の上に顔を置いた。


矢沢が俺の目を見ないように…




もし、今矢沢が俺の顔を見上げたら、間違いなく俺は…


キスをしてしまうだろう。




「先生?」


矢沢は俺を見上げようとした。


俺はもう1度抱きしめて、それを阻止した。




「俺…お前が大事。自分よりお前が大事・・・」




それはかっこつけているわけでもなく、本心だった。


こんな風に思う恋は、初めてだった。