矢沢のお母さんは美味しい紅茶を入れてくれた。


家の中はとても整理されていて、何も知らなければ絵に書いたような幸せな家庭に見えた。



どこの家庭もそうなのかも知れない。


外からは何も見えない。




「こんな時間にすいません。ちょっと最近元気がないようで心配してまして…」



俺は慣れないスーツ姿で正座をしていた。


久しぶりのネクタイで首が少し苦しかったが、足の方が痛い。



「いえいえ、本当にありがとうございます。いつも直からお話聞いてます。すごくいい先生だって… 足を崩してくださいね。」





飾られた家族写真。


手作りのコースター。


美味しい紅茶。




若くて、上品な、素敵なお母さんだった。