ドキドキして、自分が止められなくなりそうだった。
話題を変えた。
来年の転勤の可能性がなくなったことを報告すると、直も嬉しそうな顔をしてくれた。
直の卒業を俺はちゃんと見届けるから。
「これ・・・もう、いらないかも知れないけど」
俺は机の下から、紙袋を取り出して、机の上に乗せた。
白いジャージの入った紙袋。
「先生・・・ありがと」
中を覗いた直が、瞳をキラキラと輝かせて、その紙袋を胸に抱いた。
俺は自分が抱きしめられたように、幸せな気持ちになった。
直、俺のことまだ好きか?
聞きたいけど、聞けない。
「そのジャージ、多分臭いぞ!」
「ふふふ・・・イカ臭い?」
直とこんな風にまた笑い合うことができた。

