ホワイトデーの朝、お気に入りの二代目、白いジャージを着て、一代目の白いジャージを大事に紙袋へ入れた。
「おはよ~!ほら、元気出せよ!」
校門で生徒に声をかけながら、俺は笑顔を取り戻す。
いつも学校へ来ると、現実を忘れられる。
「先生、お返しちょうだいね!!」
声をかけてきた生徒。
「俺、100個ももらったからお返しは勘弁してくれよ。」
冗談のつもりで言った一言を本気にした生徒がキャーキャーと言いながら坂道を駆けて行く。
どうすれば、直にジャージを渡せるだろう。
俺は空を見上げた。
「おはよう!先生!」
にらむような顔で俺に挨拶してきたのは、中田ゆかりだった。
「あ!!ちょっと!」
とっさに俺は中田を呼び止めた。
「矢沢に渡して欲しいものあるんだけど・・・」
俺が小声でそう言うと、俺は思い切りお尻を叩かれた。
「情けない!!男なら自分で渡しなよ!!!」
叩かれた場所を痛がる俺に、中田は頑張れと言ってくれた。
そうだな、やっぱり自分で渡したい。
また空を見上げて、作戦を考える。
ため息をつきながら、顔を下ろす。
直だ。
遠くに見えた直。
1人で登校して来た直は、眠そうな顔をして、空を見上げていた。
あいつが空を見上げる時は、何かを考えている時・・・
直の癖が俺の癖になった。

