ホワイトデーが近付いてきた。



「新垣先生は、生徒にお返しするんですか?」




話しかけてきたのは、バレンタインにチョコをくれた女性の先生だった。




「ホワイトデーですかぁ?そうですね。なかなかお返しってのもできないですね。」



「新垣先生いっぱいもらってますもんね。一人一人に返すなんて無理ですよね。いまどきの高校生って、どういうつもりで先生にチョコ渡すんでしょう。」




義理だと言ってチョコを全男性教師に配っていたあなたはどうなんだろう。



「さぁ、どうでしょう。でも、どのチョコもちゃんと気持ちがこもってますからね。義理でも本命でも、生徒達からの気持ちなんで。」




直は、全部のチョコをちゃんと食べる俺を好きだと言ってくれた。

直は、自分が教師に恋をしていたから、俺にチョコを渡す生徒の気持ちが痛いくらいにわかるんだと言ってた。


直は、本当に優しすぎる子だった。



「でも、本気で恋されても困っちゃいますよね。新垣先生は優しいから、それを勘違いしちゃう子も多いんじゃないですか?」



「俺、優しくないっすよ。ただ、ちゃんと生徒と向き合いたいとは思ってますけど。」




これ以上話したくないと思い、俺は席を立った。




直を好きになったからじゃない。


それ以前から、俺は生徒からのチョコは大事に食べたし、真剣に告白されれば、真剣に答えてきた。


でも、直を知って・・・俺のその想いはもっと強くなった。


高校生だから・・・生徒だからって、その想いは、普通の女の子と同じなんだ。