直は、自分が身を引けばいいんだと考えた。





なぁ、ますますお前が好きになったよ、直。




直、別れようと言われた後に・・・

もっともっとお前に惚れてしまった俺は、これからどうすればいいんだ。






「せんせ・・・愛してる・・・ だけど、別れよう。」





「誤解すんなって!」





俺だって愛してる。



直だけを愛してる。






直が俺の人生を照らしてくれた。



直がいない人生なんて・・・俺はもう怖くて生きていけないよ。





知らなかった。



失うってこんなにも怖いんだな。



俺は何を言っても、直の気持ちが変わらないだろうと心のどこかで感じていた。



直がずっと悩んでいたのはこのことだった。


直は一度決めたことは、しっかりとやり遂げる。




直はもう決めていた。




それは俺にも伝わっていた。




握った手が、動くことはなかった。




直は言った。




「先生は娘さんとそのお母さんと一緒に生きていくべきだよ・・・」




俺の手をそっと払いのけた直は、とても悲しい顔をした。






またピアノの生演奏が始まった。





俺は、席を立つのが怖かった。





このデートが終わりに近付くことが怖かった。