あまり気の合わない学年主任と、2人きりになる機会もあまりなかった為、俺は少し緊張気味だった。
「どうして、あんなに必死になれるんですか?」
突然話しかけられて、俺は驚いた。
「ナイタースキー、どうしてあきらめなかったんですか?あんなにも反対が多かったのに、最後には、みんな賛成しちゃいましたね。」
学年主任は、マフラーを巻きなおし、口元を隠した。
「どうしてでしょうか。俺自身もわかりませんけど、どうしてもやらせてやりたかった。自己満足かも知れませんけど・・・」
俺も真似して、ジャージの襟を口元まで上げた。
外は雪が降っていた。
生徒は、スキーとおみやげ選びに夢中で、宿と宿の間の道には誰もいなかった。
「昔は・・・私も新垣先生みたいに熱くなれたんですがね。」
白髪混じりの髪に雪が積もる。
俺は、今までこの先生との間に壁を感じていた。
でも、照れ臭そうに微笑んだ先生が、なんだか近く感じられた。
「また熱くなってくださいよ!今回は、ナイタースキーを許してくださって、本当にありがとうございます。感謝してます。」
「こちらこそ、ありがとう。生徒から、お礼を言われてね・・・私は反対していた立場なのに、何も知らない生徒に、ナイタースキーやらせてくれてありがとうと言われた。」
俺とその先生は声を出さずに、目を合わせて微笑んだ。
雪が降っているのに俺の心の中はほんわかと温かくなった。