「謝るな・・・お前は悪くない。」
俺がそう言うと、直は首を横に振った。
「先生もいつも悪くないのに、謝ってくれる。私がやきもち焼いたら、いつも先生は謝ってくれるもん。」
直は俺よりずっと若くて、経験も少ないのに、考え方が大人なんだ。
お姉ちゃんのことで苦労した分、直は、同年代の生徒達よりも少し前を歩いていた。
申し訳なさそうに俺を見る直を・・・俺は思わず抱きしめてしまいそうになる。
腕を引っ張り、階段の下へと移動した。
2人きりになれる場所、誰にも見つからない場所・・・
階段の下の狭いスペースは棚と棚に挟まれて誰からも見えない場所だった。
狭くて暗いけれど、今の俺達にとって、最も居心地の良い場所。
ずっとこうしたかった。
俺は直の体を抱きしめた。
直が男のコーチにスキーを教わっている姿を笑顔で見ていたが、心の中は複雑だった。
ずっと直を抱きしめたくて、
直と2人きりになりたくて・・・