俺は散らかった部屋を軽く片付け、ざわつく気持ちを抑えようとコーヒーを飲んだ。



家に来ることはほとんどなかった。


七緒抜きで一人で来るのは初めてだった。




どこか喫茶店で会おうと言ったが、職業柄、あまり人目につく場所では落ち着かない。


内容が内容なだけに、俺の家で話すことになった。



携帯電話が鳴り、俺は窓を開けて外を見た。




『何号室だっけ?』


「階段まで迎えにいくよ。」



俺は、ダウンジャケットを羽織り、部屋を出て、階段まで歩く。



階段を駆け上がってきたのは、俺の元彼女。


俺と付き合っていた頃とは、雰囲気も服の趣味も全てが変わっていた。


染めた髪が痛んでいて、金色っぽく見えた。




「ひさしぶり!」



「ど~ぞ・・・」




今、少しだけ嫌な予感がした。



そうだった。



今、俺はいろんな人に見られているかも知れない危険があった。




里田が、もう家の周りをうろついていないとは限らないし、見られているかも知れないのに、俺はどうして部屋から出たんだろう。