俺は気が付くと直の家の前にいた。


とても寒いのに、

体が熱くて、不思議な感覚だった。




大事な人が悲しい時、

自分にできることは一体なんだろう。



俺は、直の心を少しでも温めたくて

手を握った。




俺にはもうおじいちゃんもおばあちゃんも一人もいなかった。


だから、直のおばあちゃんをもっと知りたかった。




思い出す。


俺を一番かわいがってくれた祖父の死を…



高校生だった俺は、心筋梗塞で倒れた祖父の見舞いに行くことも出来なかった。


部活の合宿だった為、俺に連絡が入ったのはもう危篤になってからだった。



俺は部活の試合を欠場してでも、そばにいたいと思った。

でも、祖父はそれを望みはしなかっただろう。



陸上の才能は祖父から受け継いだ。

祖父はオリンピック候補に選ばれたことがある有名な高飛びの選手だった。



だから、俺が陸上部に入ることを誰よりも望んでいたし、

誰よりも俺の応援をしてくれていた。



大会にはいつも応援に来てくれて、

俺の写真を部屋に飾ってくれていた。



おじいちゃんやおばあちゃんの愛って

いつまでも忘れないものなんだ。