今日の終業式の最中に、矢沢と目が合った。
すぐに目をそらしたあいつは、
後ろにいる中田と笑い合う。
最近の矢沢は笑顔が増えた。
俺に話しかけてくれることはなくなったが、
そのうちひょっこり俺の前に現れるだろう。
「せんせ~!元気?」
って。
そして、俺は気付くんだ。
本当に終わったこと。
矢沢は待っていてはくれないということに。
日々変化するめまぐるしい高校生活の中で
俺だけを見ていてくれ、なんて無理な話だ。
矢沢は恋をして
俺を思い出にして、
俺はそれを受け入れる為に、
必死で教師の顔を作る。
『お前も彼氏できたのかぁ?』なんて平気な顔して返事をする。
俺と矢沢は何事もなかったかのように
教師と生徒になり、
水の中の泡のように、いつかこの想いも消えてなくなるんだ。