そいつが言う方を見ると…


咲希が笑顔で背の高い男子と駅前のパン屋に入って行くところだった。


“誰?”


「あいつ…誰だ?」


俺の心の問いかけを真人が代わりに声にした。


「あっ!俺、あいつ見たことあるぜ
試合でだから、バスケやってるやつじゃん?」


「竜?だいじょぶか?」


肩を叩かれながら真人に聞かれて、ぼ~っとしていた俺は、ようやく我に返った。


「……俺…帰るわ…」


それだけを言うと騒ぐ仲間を無視してさっさとホームまで駆け込んだ。


…*…*…*…*…*…*…


家に帰って部屋に入るとベッドに横になりさっきの咲希を思い浮かべる。


俺にはまだあまり見せてくれたことのない満面の笑み…。


仲良さそうに寄り添いながら、自然な顔で会話してた。


しかもバスケ部?


携帯を取り出して咲希にメールしようとしたが、戸惑いが強く、何て聞いていいのか分からなくて結局なにもメール出来なかった。


明日の朝は待ち合わせどうしようかな…とか考えていたら、こんなに不安なのになぜか眠れてしまった。


真人やバスケ部員、そして咲希からメールが入っていたが、電源落ちして学校行くまで見ることはなかった。