「おぉ~よかったぁ♪
俺さ、真人っての、だから
“真人君”とか“マサくん”とか
呼んで欲しいなぁ~
あ、でさ、咲希ちゃんって
呼んでいいよね?はいっ、けって~!!」


少し早口の大きな声で中野君が話すのをただ、唖然としながら見聞きしていて、言われた内容がワンテンポ遅れて頭に入ってきた。


「へっ?えっ…そん、な…ムリ…です」


「マサッ!、俺だってまだそんなん
お願いしてないのにずりぃよ…
星谷さん、俺のこと、竜斗って
呼んで欲しいな…ダメかな?」


中野君の話でさえ、キャパオーバーしそうになったのに…その上、畳み掛けるように桜井君までもが…


「あと、えっ…あ…」


言葉が上手く出てこない状況に、さっきの話しでさらに強く感じる視線…酷くなる頭痛…


あまりにいろいろで、どうしていいのか分からなくなってしまった。


「あ…」


小さな桜井君の声がして、少しだけ彼の方を見るが、なぜだか目の前が霞んで歪んで見える。


ぼやける視界のなかで、桜井君の手が私の顔に近づいた気がした。


そう思ううちに、目から下の頬の辺りを何かがなぞった…。


「ごめん…俺…だよね?
泣かせたの…」


そんな桜井君の声で初めて、自分が涙を流していることに気がついた。