「人は愛を欲しがっているわけじゃないわ」 少し乾燥した唇を、僕は舐める。 ざらついた感触が舌先に残る。 「人が求めているのは、侵食よ」 「シンショク?」 「そう、己の侵食と他の侵食」 彼女の細い指が、艶やかな髪を梳く。 自分と、他人。