数時間後。
適当に資料を見繕って帰ろうとした時、やっぱり雪は降りだした。

やっぱり今日は止めておけば良かった…。
でも、何故だか今日、出掛けなければならない気がして…。

「伊織ー!!」

帰り際、不意に後ろから呼ばれて振り返るとさくらが居た。

「やっと追いついた。」

「どうしたの、そんなに急いで。」

「どうしたのじゃないわよ!ずっと呼んでたのに!!」

彼女はプリプリと怒っている…はずなのに可愛い。
才色兼備って言うんだろうな、たぶん。
何でもできて、いつも輝いて見える。
そのせいか、いつも男の子に囲まれている。
授業が一緒になってから、一緒にいるようになったけど、私なんて釣り合うのか時々考えてしまう。

「ごめん。ごめん。で、なあに?」

宥めながら聞くと、さくらは息を整えて話し出した。

「うん。今日、暁(サトシ)がご飯食べようっていうから、伊織も行かない?」

「うーん…。」

雪の日は食欲がないから正直行きたくない。
だけど、今日のさくらは嫌とは言わせないオーラがある気がする。
…というか、さくらのお願いに弱いんだよね、私。

「お願い!最近彼氏が暁との仲も疑うし…!でも暁のご飯食べたいし…!」

悩む私に拝み倒すさくら。
暁君はさくらの幼馴染だけど、彼氏じゃない。
暁君はさくらの事好きそうだけど…さくらは他に彼氏がいる。
かなりの頻度で暁君と居るのを見かけるからな…。
疑う彼氏の気持ちもわかる。