昨夜 一度自宅に戻った彼女だったが 今日も 朝早くから来てくれている



「せっかくの休みなのに悪いね」



そう言うと



「いいえ そんなことはありません」



それだけ言って キッチンへと行ってしまった





夕方になると 熱もだいぶ下がり 気分が良かった

二日ぶりのシャワーは 全身を爽快にさせた




「顔色がずいぶん良くなりましたね 

昨日は あのまま倒れるんじゃないかと心配しました」



私にだけ向けられる笑顔

たまらず 彼女を抱きしめた



「風邪は治り際が肝心です 横になってください」



あっさりと手をほどかれ 私の体を離してしまった




夜 仲村さんが見舞いに来てくれた



「生き返ったな 昨日の電話の声とは大違いだよ 

桐原さんに 足を向けて寝られないね」



彼女がコーヒーを出しながら笑っている



「感謝しています」



仲村さんと彼女が 顔を見合わせて笑っていた




「君達のことは 自分達で答えをだすといい

落ち着いて考えれば おのずと答えは見えてくるはずだからね」



それだけ言って 仲村さんは帰っていった





「仲村課長 ご存じだったんですね……」


「あぁ 少し前だったか 仲村さんの家に呼ばれて そのとき聞かれたよ 

”桐原さんとどうするつもりだ” ってね」


「そうでしたか……」



淡々と語る口調は もう私への感心などないように感じられた



「今日はこれで帰ります 明日 また来ます 

何か食べたい物はありませんか?」



そう言いながら 帰り支度を始めている



「もう少し ここにいてくれないか」



彼女が呆れたようにため息をつく



「どうしたんですか? まるで子供みたいですね 

熱も下がってきましたから もう心配ないでしょう 

後は睡眠をたっぷり取って 体力を回復するだけです 

ゆっくり寝てくださいね」



真顔で言うと 玄関へ向かって歩き出した



「朋代」



彼女が立ち止まる



「名前を呼ぶなんて……ルール違反です」



振り向きもせずに 怒ったような声が返ってきた