「あの、八起様手をつないでいいですか?」

「お、おう。」

ふわりと重なった小さな手にドキリとする。

きゅっと握ると、

嬉しそうな表情をする。


俺はテレ隠しにダジャレを一つ。

『痴漢注意』の看板を指差し、

「痴漢はアカン」

音々はプッと笑い、

「30点あげます!」

といった。

その割にクスクス笑い続けてる音々。

そんな彼女を見つめながら、

つながる手から伝わる温かさに酔う

いつもなら、早く着きたいと思う帰り道。

永遠に続いたらいいのに、

と思うような、

ちょっと切ないような、

恥ずかしいようなふたりの時間だった。

いい年して俺は本気の恋をしている。