少年のような、短く切られた髪。


くるりと丸いどんぐりのような目

目線が釘付けになるような綺麗な額は、

眩しくてドキドキする。


つい最近まで、ふっくらしてたであろう色白な頬は

やつれて、今日までの苦労が見て取れる。


よくも、そんなひどい仕打ちをこんな綺麗な子にできるのだろう。


この年まで、なんの苦労もなくその父とやらに、

大切に育てられてきたのだろう。


人が騙すということなど思いもしていないようだ。


天使のような笑顔を作る。


「なんとかウィーンに戻れればと思って知り合いに連絡を取りましたら、

 どなたかが、退団の手続きから、

 下宿の解約までしてくださったようで、

 どこに行ったらいいのか、

 実は途方に暮れてるのです。


 どうしたらいいか、八起様に

 ご教授いただけたらありがたいのです。」


その親戚とやらは、一銭もこの娘に残したくないのだろう。

さて、どうしたものか?