愚問だったなと思い返した。

幸せかどうかなんて、その人の基準によって違うのだから。

でも、少なくとも、二人がいたわりあって

寄り添っているということはわかった。


「お世話になりました。また、使わせてもらいます。」


挨拶をして、音々を探すと、

女将と嬉しそうに話をしていた。


よく似ている。


改めてそう思った。


いつか、母娘と名乗れる日が来るのだろうか。


とりあえず

俺たちはいわゆる世界一般の「幸せ」ってやつを

手に入れたはず。


この旅館の女将たちのように、

いつまでも途切れることなく

一生作り続けていけるように

なりたいところだ。


まずは音々の本当の笑顔を取り戻さなくちゃな。


嬉しそうに駆け寄ってくる我が妻を、

見つめながらそう決意した。