「え?」

部屋に入ると、

金の屏風に座布団2枚しかなかった。

なんだこれ、泥棒?

いやいや、旅館の備品盗む泥棒は考えにくい。


呆然としていると、


「失礼します。」


女将と仲居さんがやって来た。


「本日は、お疲れのこととは思いますが、

 私どもで趣向を用意いたしました。


 よろしければ、お付き合い頂きたいのですが

 いかがでしょう?」


「だってさ、どうする?

 俺はいいけど、音々は?」


「はい。八起さんさえよろしければ。」




「ありがとうございます。

 では、ご用意いたします。」


女将は中居に目配せをしながら言うと、


「はい、奥様こちらへ。」


と、仲居さんは音々を連れて行った。


二人が出ていくのを確認すると、

女将は、緊張した顔で、俺に話しかけた。


「野村様、お話があります。」