私は家に来た時からほとんど鳴き声も出さずに、遊ぶ時以外はおとなしいマシュが心配であったが、千恵子は先に威嚇の声を出したマシュを見て

「やっぱりな、おとなしそうに見えて、気が強いと思ったわ」
と言った。

しかしマシュも警戒しているのか、雰囲気の違う初めての部屋であり、あまり動きはしない。

十五分か二十分くらい経っただろうか、今日はこのくらいにしとこうと思いマシュを二階に連れて戻った。



翌日、千恵子は午前九時半頃に仕事で家を出て行った。

私は相変わらずマシュの相手をしに部屋に行く。

そして午後は小説を書く。

その日の夜、夕食が済んでから昨日と同じ様にマシュをリビングに連れてきた。

昨日よりは慣れたのか、少し歩いては座り、少し歩いては座っている。

相変わらず、クロとミルは警戒の目でマシュを追っている。

ミルとは距離が近づいても、耳を伏せて相当に警戒している表情ではあるが、喧嘩をしそうにはない。

ゆっくりと近づいては、少し匂いを嗅ぐと離れた。

問題はクロである。

オスで七キロ近くあり大きくて力も強い。
ただし去勢はしている。