天国のマシュに会いたい

私も千恵子も先生や助手の人がするように上手く尿を出せるか、点滴を打てるか自信が無かったが、先生が練習をすれば簡単であると言って、千恵子に実際に尿の搾り出し方を教えたのだが、千恵子はなかなか上手く搾り出せない。

何回やってもだめである。

その光景を私は見ていたが、先生の手の位置と絞り方の説明をよく見ていて、私は何となくできそうな気もした。

点滴の針の刺し方も教えてくれ、それは尿を搾り出すよりは簡単であった。

そして、とりあえず家で尿を搾り出すのと点滴をすることにして、点滴をつるす道具などを買って来て天井に取り付けた。

夕食後は、昨夜と同じ様にゲージを開け放してやると、マシュはすぐに出てきて

「コツ、コツ、コツ・・・」

痛々しい音を響かせながら歩き、ソファまできたり、水を飲みに行ったりと昨夜よりは多く歩いた。

その頃、右足の指先は爪がもげて黒くなって石のように固くなりミイラ化していた。

だから右足も、その黒く硬くなった部分が床にあたり、歩く時に
「カチ、カチ、カチ・・・」
と音がする。

何とも痛ましかった。

だが歩けるようになっただけでも奇跡のように感じた。