風はさっき止んだ筈なのに。 一陣の風が吹いた気がした。 うわ…なんだこれ。 あの旋律が流れ出す。 再び胸が鷲掴みにされたように苦しくなっていく。 長調でゆったり流れるバラードはどこか短調的な切なさを含んでいて。 それに何より音が。 一音一音が胸に刺さっていく。 さっきより、よほど強く。 激しい曲ではなくて、むしろゆったりしているのに、音が衝撃波のように俺に飛んできて何回も鳥肌を立たせる。