「クリスマス、泊まりでどっか連れてって。
そしたら、許してあげる」
げっ……、そうきたか。
どうにかかわせないだろうか……。
「もう12月になっちまったし……もう、どこもいっぱいじゃないか?」
「何よ、探しもしないで。
私、遊園地がいい」
「混んでる、混んでる。やめとけ」
「じゃ、北海道」
「寒いぞ、しもやけできるぞ」
「じゃ、沖縄」
「そりゃ1泊じゃ無理だろ」
紗江は、もう、と、フォークで俺の手を突いた。
「いてっ」
「翼、どこも行く気ないんでしょ!」
うっ、バレバレか。
スナイパーのような紗江の目をごまかすのは、やはり無理だったか……。
何で俺は、耳しか良くないんだ。
ちょっとでも、口がうまけりゃなぁ。
「すまん」
「はぁ?」
正直に話すしかない。
俺は覚悟を決めた。
「クリスマス、24日は無理だ」
「はぁ?何で?」
うぉ。
紗江の眉間に皺が。
「先約があって……」
「何の?」
「……ライブ」
「誰の?私も一緒に見に行く」



