深音が玄関に出ると、母親は、
「おバカ!!」
と言って、彼女の頭を叩いた。
「いたぁ!」
「堺沢さん、すみません。
本当に、この、バカ娘!」
「ママ、ひどっ」
「で……?
二人はどうなったの……?」
うっ。
何故、そんな期待を込めた目で俺を見る。
思わず敬語になってしまう。
「おかげ様で……仲直りというか……
今まで通り、お付き合いさせていただく事になりまして……」
「……良いんですか?」
「はい」
次の瞬間。
あぁ、と言った母親に、何故か抱きつかれた。
「!!」
「ママ!!」
「深音、私の方が堺沢さんを好きになりそう……」
「ダメ!!」
冗談よ、と母親は娘をなだめた。
「堺沢さん……
ありがとうございます……」
母親は、また頭を深く下げた。



