「……あ……雪……」
部屋が暗くなり、指先がかじかむと思ったら。
窓の外に、小さな白い雪が舞うのが見えた。
時間を忘れ、ただお互いの命を貪るように口づけを交わした後で、やっと気づいた。
「……ママに、連絡しなくちゃ……」
「……帰るのか?」
「うん……嫌だけど……心配してるだろうから……」
手を離してしまったら、この雪に彼女をさらわれてしまいそうで、怖かった。
しかし何とか、彼女の体を胸から離す。
深音は、電話で母親に迎えを頼んだ。
二人の間に、何とも離れがたい雰囲気が漂う。
俺は、電話を終えた深音を、再度抱きしめた。
「……もう、何も言わずにいなくなるなよ」
「うん……そういえば……」
「ん?」
「どうして、あたしが水族館にいるって、わかったの?」
「あぁ……ただの勘」
深音は驚いた顔で、うそ、とこぼした。



