その美しい唇を、すぐ触れられる距離に離して、言葉を振り絞る。
「許さねぇ。
何が幸せだった、だよ。
勝手に終わらせてんじゃねぇ」
「……離して……っ」
「離さない!」
深音の体が、ビクリと震えた。
「……離さない……」
「翼さん……」
見つめた目は、驚きで、一瞬だけ涙が引っ込んだようだった。
「……セックスなんか、できなくていい。
その為にそばにいたわけじゃない」
「……」
「何も、いらない。
ただ、生きて……
歌ってくれさえ、すれば……」
彼女の頬に、雫が二滴、落ちた。
一粒は、彼女の。
一粒は、俺自身の。
「もし、どうしても死ななきゃならない時は、
俺のそばで死ね」
「翼さん……」



