大粒の涙が、彼女の頬や首を濡らして光る。
深音はぐっと口を結ぶと、俺の前から去ろうとした。
俺は、その細い手を。
火傷をした右手で、つかんだ。
深音が、ハッと振り返る。
「……翼さん、手……」
「こんなもん、痛くねぇ」
「……離して、ください……」
「断る」
不思議と、腕の火傷は痛まなかった。
それより、彼女の言葉の方が。
何万倍もの痛みを、この胸に与えた。
「ふざけんなよ……どれだけ、勝手なんだよ」
「ごめんなさい……」
「許さねぇ」
「ごめんなさい……!」
悲鳴に似た泣き声。
そんなもん、聞きたくねぇんだよ。
「許さねぇっつってんだろ……!」
強引に深音の体を抱きよせ、唇をふさいだ。
唇の間から、彼女の苦しそうな息が漏れる。



