今度は俺の顔が歪む番だった。
「なんてね。
ただ、私はあの子が嫌いなだけ」
「……」
「……じきに、全てがわかるわ。
その時、あの子を好きになんかならなきゃ良かったって、思うのよ。
それまでせいぜい、悲しい純愛ごっこを楽しんだら?
じゃあね。
哀れな、ベーシストさん」
そう言い捨てると、紗江は軽やかな足取りでさっさと帰ってしまった。
後に、怒りと不安だけを残して。
いったい、なんだって言うんだ。
まだ、深音に秘密があるっていうのか。
「……クソ……!」
深音に会いたい。
たった2日会わなかっただけで、もう何年も離れてしまったみたいだ。
会いたい。
この不安を、愛しさで消し去りたい。
しかし、果たして。
俺は、この期に及んで。
彼女に、いったい何をしてやれるのだろうか。



