市内で一番大きなこの総合病院は、裏に広い庭がある。
普段から患者やその家族に開放されているのだろう。
ただ、冬である今は、花も咲いておらず、余計に寒々しい。
「寒いね。中に入る?」
「……良い。用件だけ言え」
「冷たいわね」
出来れば、会いたくなかった。
紗江の恐ろしい警告のせいで、こんな事態になったような気さえする。
「テレビ見たよ。だから、やめろって言ったのに」
「お前が一枚噛んでんだろ?」
「やだ。
私は、警察のお世話になるような、おバカじゃないわ」
意地の悪い顔でふふ、と笑う。
その顔を張り倒してやりたいという欲望を、必死で抑えた。
「あの子、倒れたってね。
ホームページに、励ましの書き込みどっさりだよ」
「……」
「思わず本当の事、書き込もうかと思っちゃった」



