「そろそろ、お返ししなきゃ」
にこ、と笑って、それを俺に差し出す。
……そうか。
もう、ここは陸の家じゃないもんな。
私物も、持って帰ってもらったし。
それを受け取りながら、少しだけ寂しさを感じた。
もう、滅多に寄らないつもりなのだろう。
「ミシンはどうする?帰りに乗せていくか?」
「あ……えっと……」
深音は、言いにくい事を言うような顔をした。
「置いておいてもらっても、良いですか?
今度からは、翼さんがいるか確認して来ますから……ご迷惑じゃ、なければ」
「…………」
「彼女でもないのに、勝手に出入りしたら、気味が悪いでしょ?
だから、たまに……連絡してから、来ても良いですか?」
ああ、そうか。
俺に、気を使ってるのか。
「……最近は、眠れるか?」
「はい。大丈夫です」
「そうか。じゃあ、これは返却な。
春までは暇だから、いつでも連絡しろ」



