そして、目の端に入る古びたオルガン。


「ほんとにあったのか……」


「あったんだよ!
ねぇねぇ、ちょっと鳴らしてみない?」


私の返事も聞かずオルガンに駆け寄って、プラグをコンセントに刺す江夏。


ちったぁ人の話聞かんかい。


「この天才ピアニスト、柔沢江夏の腕がなりますなぁ~」


「お前ピアノやってたのか。
11年間お前とつるんでるが、そんな話聞いたことないぞ」


「やだなぁ~。
ジョークだよ。

じょ・お・く!」


ウィンクをしてきた江夏の腰を、渾身の力を込めて蹴る。


「ぐはっ!」


「どけ。
お前は邪魔だ」


江夏をどかして、今度は私がオルガンの前に立つ。


人差し指で【レ】の鍵盤を押した。


――プエェ~~~~


……なんか気の抜ける音だな。


「力が抜ける音だよぉ~。
ぷえーー」


「そのままくたばってしまえ」


適当な曲を弾いてみる。


――プ、プ、ププエェ~~~~


「……っく」


だんだん笑えてくるな(笑)


「ぷ。
くひゃひゃ」


……気味の悪い笑い声をもらしているこいつは放っておこう。