美鈴と啓介は絵美を彼女の家に送り届けるとその足で美鈴の家に向かった。先ほどの出来事とハーリーティのはなした内容を美里の意見を聞くためだった。単純に考えると啓介の父に聞いた方がよりよい情報を聞くことが出来るのだが、彼は美鈴に危害を加えかねないので美里に聞くことにしたのだ。
彼女たちの話を聞いて美里は深く考え込んだ。今回の問題は娘たちには荷が重すぎる、そう考えているのだろう。
やがて美里は溜息をつき、思い唇を開き始めた。
「確かにあなたたちには荷が重すぎるわね。これは大人が絡んでいることだし、単純に解決できることではないわ」
「でも、このままには出来ないでしょう?」
「そうなのよね、『もの』たちとは違って生きているものにはそれなりの制約があるものね」
「生きているものの制約?」
「食べて、眠ることよ」
美里が再び溜息をつき、美鈴が納得したように頷いた。
「でも、これは大人を介入させる必要があるのでしょう?」
啓介は真剣なまなざしで言った。
「確かにそうよ。でも簡単にはいかないわ」
「どうしてですか?」
「例えば児童相談所に通報したとするでしょう。それでもそこの職員が該当する家庭の中に入り込むことが難しいのよ」
「どうして?」
「面接を拒否したり、虐待を隠したり、躾だと言ったりするのよ」
「それでも私達が見た子供の体には酷い傷跡が幾つもあったわ」
「それは見えるところにあったのかしら?」
「いいえ、洋服に隠れたところです」
「やっぱりね…」
美里にとってもこの問題は重すぎるものだった。子供はやはり親元にいた方が良いはずなのだが、その子供たちの家庭環境は地獄であろう。仮にハーリーティの元から子供たちを連れ帰っても再び地獄に帰るようなものだ。そしてその先には『死』が待っているといっても過言ではない。子供を一時的にでも親から引き離し、保護をする必要がある。
しかしそのためには虐待があるということを証明しなければならなかった。ハーリーティも善意で保護している。彼女も納得させる必要があった。
そのためにはどのような方法が考えられるのか…。
三人の言葉が止まってしまった…。
「ここは警察に介入してもらうしかないのかもね…」
不意に何かに思い当たったように美里の唇が開いた。
「警察?」
「そうよ、以前の法律と違って今の法律は比較的警察力が介入しやすくなっていると聞くわ。それでも十分とはいえないみたいだけど…」
美里の言葉を聞いて美鈴は一人の刑事を思い出した。
着古したスーツに身をゆだね、いつも疲れたような表情をした刑事。
小島良だった。
彼の電話番号なら以前に聞いて知っていた。
あの人に相談すれば動いてくれるかもしれない。
美鈴の心の中に微かな希望が浮かんだ。
「でも、虐待があったという確実な証拠は必要よ」
美里は二人に念を押すように言った。
「それなら、写真に撮る、というのはどうですか?」
啓介が自分の携帯電話のカメラ部分を指さしていった。
「そうね、それが今出来る最良の方法かもしれないわね。でもそのためにはもう一度ハーリーティのところに行かなければいけないわね」
「そこへ行くことについては問題はないと思いますが…」
「ただ行くだけでは駄目かもしれないわ。ハーリーティに説明して納得させる必要があるかもしれない。そのためにはあなたたちだけでは信用されないかもしれない」
「それじゃあ、どうしたらいいの?」
「私も一緒に行くわ。大人の私であればあなたたちだけより信用されるでしょうから…」
美里はそう言うと自分の部屋に入り身支度を始めた。
美鈴たちは再びハーリーティの元に向かうことを決意した。
彼女たちの話を聞いて美里は深く考え込んだ。今回の問題は娘たちには荷が重すぎる、そう考えているのだろう。
やがて美里は溜息をつき、思い唇を開き始めた。
「確かにあなたたちには荷が重すぎるわね。これは大人が絡んでいることだし、単純に解決できることではないわ」
「でも、このままには出来ないでしょう?」
「そうなのよね、『もの』たちとは違って生きているものにはそれなりの制約があるものね」
「生きているものの制約?」
「食べて、眠ることよ」
美里が再び溜息をつき、美鈴が納得したように頷いた。
「でも、これは大人を介入させる必要があるのでしょう?」
啓介は真剣なまなざしで言った。
「確かにそうよ。でも簡単にはいかないわ」
「どうしてですか?」
「例えば児童相談所に通報したとするでしょう。それでもそこの職員が該当する家庭の中に入り込むことが難しいのよ」
「どうして?」
「面接を拒否したり、虐待を隠したり、躾だと言ったりするのよ」
「それでも私達が見た子供の体には酷い傷跡が幾つもあったわ」
「それは見えるところにあったのかしら?」
「いいえ、洋服に隠れたところです」
「やっぱりね…」
美里にとってもこの問題は重すぎるものだった。子供はやはり親元にいた方が良いはずなのだが、その子供たちの家庭環境は地獄であろう。仮にハーリーティの元から子供たちを連れ帰っても再び地獄に帰るようなものだ。そしてその先には『死』が待っているといっても過言ではない。子供を一時的にでも親から引き離し、保護をする必要がある。
しかしそのためには虐待があるということを証明しなければならなかった。ハーリーティも善意で保護している。彼女も納得させる必要があった。
そのためにはどのような方法が考えられるのか…。
三人の言葉が止まってしまった…。
「ここは警察に介入してもらうしかないのかもね…」
不意に何かに思い当たったように美里の唇が開いた。
「警察?」
「そうよ、以前の法律と違って今の法律は比較的警察力が介入しやすくなっていると聞くわ。それでも十分とはいえないみたいだけど…」
美里の言葉を聞いて美鈴は一人の刑事を思い出した。
着古したスーツに身をゆだね、いつも疲れたような表情をした刑事。
小島良だった。
彼の電話番号なら以前に聞いて知っていた。
あの人に相談すれば動いてくれるかもしれない。
美鈴の心の中に微かな希望が浮かんだ。
「でも、虐待があったという確実な証拠は必要よ」
美里は二人に念を押すように言った。
「それなら、写真に撮る、というのはどうですか?」
啓介が自分の携帯電話のカメラ部分を指さしていった。
「そうね、それが今出来る最良の方法かもしれないわね。でもそのためにはもう一度ハーリーティのところに行かなければいけないわね」
「そこへ行くことについては問題はないと思いますが…」
「ただ行くだけでは駄目かもしれないわ。ハーリーティに説明して納得させる必要があるかもしれない。そのためにはあなたたちだけでは信用されないかもしれない」
「それじゃあ、どうしたらいいの?」
「私も一緒に行くわ。大人の私であればあなたたちだけより信用されるでしょうから…」
美里はそう言うと自分の部屋に入り身支度を始めた。
美鈴たちは再びハーリーティの元に向かうことを決意した。


