ここ数日、学校から帰宅して、夕飯を済ませると、透はすぐにパソコンに噛り付き、旅行先の島のホテルを一軒ずつ吟味した。


キッチンで後片付けをしている琴美は幸せな気分になる。

こんな、なんでもないことで。

透が何かに熱中する姿を久しぶりに見た。



琴美が風呂から出ると、透がいきなり、目の前にアイパッドを差し出した。



「琴美、これにしようと思うんだけど。」

「見せて。」


琴美が見ると、その画面は、青い海、贅沢な食事、広大な敷地内に点在する沖縄らしい赤い屋根瓦のコテージ型ホテルを紹介していた。



透が提案してきた旅行先は、石垣島より、さらに高速船に乗って30分程の島だった。


グレードの高いリゾートアイランドとして、ここ数年で幾つかのホテルがオープンしていた。



「うわあ、すごい!」

文句のつけようのないくらい素晴らしい南国リゾートに、琴美は声を上げずにはいられなかった。







早朝に家を出たのに、その島に着いた時には昼を少し過ぎていた。


夏休みとあって、羽田空港から石垣島までの直行便が満席で、那覇を経由するしかなかった。

那覇に着くと、蘭の花のお出迎えで一気に南国気分だ。



石垣空港からまたさらに移動して、石垣港から高速船に乗る。


夏真っ盛りの沖縄の離島の太陽は、凶暴なほどの陽射しでじりじり肌を焦がす。


それでも、エメラルドグリーンの海は素晴らしく輝き、高速船を待つ間、防波堤から海を眺めていた琴美は一瞬気が遠くなる。



この世に天国があるなんて、信じてはいないけれど、あるとすれば、今いるここがそうだ…と思った。


サンドレスの裾を気にしながら、しゃがみ込む。


すぐそこの水面に色鮮やかな熱帯魚達が群れているのが見えた。



この赤と白のチェックのサンドレスも、履いているウエッジソールのサンダルも、この旅行の為に揃えたものだ。


ディナー用には、白地にプルメリアの花がプリントされたノースリーブのワンピースを用意してきた。

広く開いた襟ぐりは、琴美の滑らかなデコルテを綺麗に見せてくれる。