何回も手の中で震えるスマートフォン。
画面には大好きな人の名前。
出るか出ないか迷って、[通話]にタッチした。
「はい」
《おいっ、雛子!なんで、お前卒業式出てねーんだよ!》
「次郎、昨日ぶりだね…」
《そんなこと今はどーでもいーんだよ!
雛子、今どこにいんだよ!》
「…どこだと思う?」
《は?》
「もう…行く大学がある県に引越したの」
《じゃあ…お前は》
「うん、昨日は卒業証書取りに行って来たの」
《なんだよそれ…なんで今日来なかったんだよ…明日からでも行けただろ》
次郎の切ない声に涙が流れる。
「もう….限界だったの」
《限界…?》
「もう….彼女がいる次郎を見たくなかった。
もう、次郎の側にいたくなかったの」
会うこともないし、今まで隠していた感情を露話にする。

