「箱田~、今何時だ?ん?」
「14時42分ですかね?」
「先生、何時にお前を呼び出した?」
「9時でしたっけ?」
「そうだ、9時だこの野郎」
「いやー、ちょっと遅刻しちゃいましたね」
「うるせー、馬鹿野郎。大遅刻だ、この馬鹿」
この担任の馬鹿にしたような言い方を聞けるのも今日で最後か…。
そんなことを考えながらぼーっと、担任を見る。
「おい、箱田聞いてんのか?」
「ん?聞いてない」
「聞け。だからな、明日…本当にいいのか?」
「うん。だから、今日ここに来たんでしょ?」
「それもそうなんだけどな…てっきり9時に来ないから考え直したのかと思ったよ」
「いや、気持ちは変わってないです」
担任は小さなため息を吐くと、机から少し大きめな画用紙を取り出した。
「3年2組、箱田雛子さん、卒業おめでとう」
ゆっくり画用紙が目の前に差し出される。
画用紙には“卒業証書”の大きな文字。
「….ありがとうございます」

