――そう、こいつのクリスマスの過ごし方は毎年同じ。
朝、開店するなりレンタルショップに行き、何時間もかけて山ほどDVDを借り、ケンタッキー、もしくはデリバリーのピザ、またはコンビニで好きな物を適当に買って、夜までひたすら映画鑑賞。
今やおじさんやおばさんも、クリスマスにデートの一つもしない娘をただ、苦笑いして見てるだけ。
ついてに、俺の親も……。
「聖が寂しくて、あたしに付き合うってのなら、構わないよ~」
――……。
また、語尾に“♪”マークがついてる。
見えるぞ。
「と、とにかく! 明後日のクリスマスイブ、ヒルズで待ってるからな! 来いよ! おまえが来るまで待ってるからな!」
「気が向いたらね~」
またもや発せられる、気のない返事を背に、あいつの部屋を出た俺は、冷たい廊下でため息をついた。
俺だって、大して威張れるようなクリスマスの過ごし方はしていない。
なんつっても、毎年やる事は殆ど同じなのに、相手が違う。
映画鑑賞に没頭してるあいつの方がまだ、自分の気持ちを誤魔化してきた俺より、よっぽどマシかもしれない。