完全に乗っ取られた、俺のペース。


「ああ、俺の奢りだ、こんちくしょう!」


 俺は手を伸ばし、聖の手を手袋越しに力強く握りしめた。


 同じ年の同じ日、同じ病院で、早朝と夜、十何時間差で生まれてきた俺たち。


 親同士も元々知り合いで、家も隣同士。


仲良しの印にと、読みを変えた同じ漢字一文字の名前にされ、文字通り、ずっと一緒に育ってきた。


「聖が破産するまで食べるけどいい?」


「好きにしろ」


 しっかりと手を繋ぎ、予約したホテルのレストランへと歩き出す。


 ――好きだよ、聖。


 握った掌が暖かい。と、


「さっきの続き、ちゃんと言えよ?」


もう必要ないだろう言葉の続きを、聖が要求してきた。


「あ~判ったよ、ちくしょう!」


 外はメチャクチャ寒い。


だけど、この俺たちの記念すべき二十歳のクリスマスイブは、今まで過ごしてきたどのクリスマスイブより、最高にハッピーでホットだった。



FIN