寒さが未だ肌くどく残るなか、桜の咲く季節となった。

この春に、俺は晴れて高校生となる。

俺の名前は、神風将人。

俺が入学するのは、かの有名な“世界超能力者学園”。

圧倒的大人数を抱えるマンモス校で、中・高・大学を含めてひとつの都市と化している。

そこに集まるのは世界各国からの異能者――超能力者(サイキッカー)達だ。

彼らは力場(パワー)、魔術(メイジア)、念力(キネシス)から剣術(ソードマン)や

退魔(エクソシスト)に至るまで多種多様で、俺もその中に含まれる一人なのだ。

……という、つもりだったのだが。

 登校初日から始まっていた“超能力者適性テスト”。

このテストを経ることで超能力のランクを振り分けられるわけだ。

俺は足掻くも空しく、そのテストに散々な結果を刻むこととなってしまった。

テストの結果……俺の能力は“念力”に相当する。

能力はあるにはある。

だが、この“念力”はいわゆる未発達段階。

広い可能性を秘めているといえば、聞こえはいいかもしれないが、

それでも最弱に変わりない。

この学園には一万人もの能力者が集うことになるのだ。

その中では俺のような“念力”程度では埋もれてしまう。

クラスの割り振りについても絶望的だ。

「はぁ~……」

思わずに嘆息が漏れる。

実を言うと俺はテストのことなんて忘れきっていたのだ。

 「適正テストは登校の初日からだからね! ちゃんと忘れないようにしとくのよ!」

その母の一言をようやく思い出すことが叶ったのは、当日の朝。

当然……阿鼻叫喚の図となったわけである

 そして、適正テストは終わり放課後に俺は、

今日知り合ってばかりの三浦零斗(みうら・れいと)に話しかけた。

三浦はどちらかというと活発な性格ではないが

並外れた冷静さと集中力を持っている。

なぜ、俺とは真逆の三浦と知り合ったかというと・・・

今朝、学校へ行く途中にぶつかってしまい、

「ごめ、急いでるから」

「ところで、名前教えて!」

「三浦…」

聞こえにくいな…。

「なんだって?もう一回言ってくれ!」

そしたら、彼はさっきより少し大きな声で

「三浦…三浦零斗!」

といった。

「そっか…同じ学校だと思うから後で謝罪にでも…」

最後の方は、自分でもよくわからない…

本当に、テキトーだったと思う。

とにかく、俺はそう言い駆けていってしまったのだ。

三浦をクラスで見たときは、

「あっ!」

思わず声に出そうだった。

俺は、今朝の奴にしっかり謝ろうと駆けより話しかけた。

「さっきはすまなかったな・・・」

「ううん・・・別に気にしてないから」

俺は、三浦のその冷静さに声も出ないほどびっくりした。

「ああ、そうだテストどうだった?」

「今回は簡単だったかな」

俺は、驚愕した……

自分は、全然ダメだったのに・・・と思いつつ、あることを尋ねてみた。

それは、初めの印象にもあったようにすごく冷静なことだ。

俺は、その冷静さはどこからきてるのか不思議でしかたがない。

だから聞いたのだ!

「お前、なんでそんなに冷静でいられるんだよ」

三浦は、静かに口を開いた。

「僕は、感情的になってはいけないんだ・・・」

「感情的になると念力の制御ができなくなって大切なものを傷つけてしまう」

三浦は、悲しげにそうつぶやくように言ったのだった。

俺には全く理解できない発言だった……。

思わず俺は

「どういうこと?」と聞いた。

三浦の表情は感傷的な顔になりながらも口を動かした。

「簡単に言うと念力は人の感情によって

能力が暴走したり能力がうまく発揮しなったりするってこと」

難しい顔をしながらも質問を続けた。

「それじゃあ、お前は過去にそんなことがあったのか?」

三浦は、質問には答えなかった。

いや、答えたくなかったのだろうか。

そのあと少しの沈黙が訪れた。

俺にとってはものすごく長く感じた。