「悪ぃ‥」

そう言いながら男は立ち上がる。

「莉奈、大丈夫か?」

蒼は莉奈の手をとり立ち上がらせたその時だった。
男は青ざめた顔で急に態度を変えた。
そして‥

「そ‥蒼様!申し訳ありません!蒼様のお連れ様とは知らずに‥」

男が蒼の前で土下座をしたのだ。
莉奈は意味が分からず、蒼の方を見た。蒼はいつも莉奈に見せる優しい顔ではなく、無表情だ。

「やめろ。いいから行け」

蒼は男に冷たく言い放つ。
男は蒼に頭を下げ、足速にその場を去って行った。

「蒼‥?」

今のは一体‥?

「‥莉奈にはあまり言いたくなかったけど‥」

蒼は莉奈から目を逸らし、いかにも言いたくなさそうにしている。

「俺はこの町の‥この国の王なんだ。」

莉奈が理解するまで、二人の間に沈黙がになる。


「え‥えーっ!!」

莉奈は驚くしかなかった。

「王って王って!1番エライって事!?王子様って事!?」

周りを気にする余裕もなく、大声で蒼に聞いた。

「ま‥まじ!?町は和風だけど‥王って‥洋風じゃん‥アハハ‥」

何を言ってるんだろう‥。
そう思いながらも、驚きを隠せない。
それでも蒼は冷静だった。

「隠していたわけじゃないんだ。
‥莉奈にはあまり、言いたくなかった。」

蒼は寂しげに下を向いている。

「‥なんで?」

「王と知れば、もう今までのように話してくれないと思ったから‥俺は王であっても人間なんだ。対等に、話しをしてほしいんだ」

蒼は不安だった。